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学校事務の仕事は「法律の上に成り立っている」といっても過言ではありません。給与計算・個人情報管理・施設管理・授業料の取り扱いまで、学校事務員の業務のほぼすべてに何らかの法律・制度が関係しています。しかし、どの法律が自分の仕事に関係するのかを把握している事務職員は意外に少ないのが現実です。
私はSE歴10年以上から私立学校事務に転職しました。SE時代は「知らなかった」では済まされない法令遵守の文化が当たり前でしたが、学校事務でも同じです。むしろ学校は子どもの個人情報・学費・労務と、非常に慎重な扱いが求められる情報を大量に扱う職場です。
この記事では、学校事務員として知っておくべき法律・制度を10個、実務と結びつけながら解説します。転職前の方にも、入職したばかりの方にも役立つ内容です。




なぜ学校事務員に法律の知識が必要か
まず、なぜ学校事務員に法律知識が求められるのかを整理します。学校事務が扱う業務は、実は法律と直結しているものがほとんどです。
| 業務 | 関係する法律・制度 |
|---|---|
| 学籍管理・就学援助 | 学校教育法・学校教育法施行規則 |
| 給与計算・社会保険 | 労働基準法・私学共済法・社会保険各法 |
| 学校の経営・会計 | 私立学校法・学校法人会計基準 |
| 個人情報の取り扱い | 個人情報保護法 |
| 授業料・就学支援金 | 高等学校等就学支援金制度 |
| 施設・安全管理 | 消防法・労働安全衛生法 |
| 採用・労務管理 | 労働基準法・育児・介護休業法 |
学校事務員が知っておくべき法律・制度10選
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01学校教育法 最重要
学校事務員が最初に知っておくべき法律が学校教育法です。日本の学校制度の根幹をなす法律で、学校の種別(小学校・中学校・高校・大学・専門学校など)の定義・設置基準・学校の目的が規定されています。
実務との関係では、「どの学校種に在籍するか」によって就学援助・支援金制度・各種手続きの対象範囲が変わります。また、学籍管理の根拠も学校教育法施行規則にあります。「なぜこの書類を作るのか」「なぜこの記録を保存するのか」という問いへの答えが、この法律の中に詰まっています。
02私立学校法(令和7年改正対応) 最重要
私立学校に勤める事務職員にとって、私立学校法は学校教育法と並ぶ最重要法律です。学校法人の設立・運営・ガバナンス・解散に関する規定が含まれており、理事会・評議員会・監事の権限と役割もここに定められています。
特に令和7年の改正により、学校法人のガバナンス強化・財務情報の公開義務・評議員会の権限強化などが盛り込まれました。そのため、従来の運営方法を見直す学校が増えており、事務職員もこの改正内容を把握しておくことが求められます。
03個人情報保護法 最重要
学校は生徒・保護者・教職員の個人情報を大量に扱います。氏名・住所・成績・健康情報・家庭環境——これらはすべて個人情報保護法の対象です。法律の要点として、個人情報の取得・利用・管理・第三者提供・漏洩時の対応が規定されています。
また、令和4年改正により「漏洩した場合の報告義務」「不正利用の罰則強化」などが追加されました。学校でよくある「名簿を業者に渡す」「写真をHPに掲載する」「卒業生の連絡先を同窓会に提供する」といった行為もすべて個人情報保護法の範囲内です。
・学校HP・広報誌への写真掲載(本人・保護者の同意が必要)
・成績・健康情報など要配慮個人情報の管理
・退職者のデータ削除・紙媒体のシュレッダー処理
04労働基準法 最重要
給与計算・勤怠管理・休暇対応を担う学校事務員にとって、労働基準法は必須知識です。労働時間・残業代・有給休暇・解雇規制・賃金支払いの原則(通貨・直接・全額・毎月・一定期日払い)など、すべての雇用関係の土台となる法律です。
特に有給休暇の「年5日取得義務」(2019年〜)は学校でも適用されます。また、時間外労働の上限規制(36協定)も学校法人に適用されるため、繁忙期でも法令の範囲内での業務管理が求められます。
05私立学校教職員共済法(私学共済法) 重要
私立学校に勤務する職員が加入する私立学校教職員共済(私学共済)の根拠法です。健康保険・年金・退職金・福祉事業の仕組みがここに定められています。給与計算で控除する私学共済掛金の計算・手続き、育休・産休中の掛金免除申請などはすべてこの法律に基づいています。
また、資格取得届(入職時)・資格喪失届(退職時)・育児休業等掛金免除申出書など、採用・退職・育休のたびに事務手続きが発生します。手続きの漏れや遅延は職員の不利益に直結するため、正確なタイミングでの対応が求められます。
06学校法人会計基準 重要
一般企業の会計(企業会計原則)とは異なり、学校法人には学校法人会計基準という独自の会計ルールがあります。資金収支計算書・事業活動収支計算書・貸借対照表という3つの財務諸表の作成が義務づけられており、科目の分類・計上ルールが一般企業とは異なります。
したがって、一般企業での経理経験があっても「学校法人会計は別物」として学び直しが必要です。特に消費収支と資金収支の概念、基本金・繰越消費収支差額の扱いは独特のため、入職後に専門書や研修で学ぶことをおすすめします。
07高等学校等就学支援金制度 重要
高校に勤務する事務職員にとって特に重要なのが高等学校等就学支援金制度です。国が高校生の授業料を支援するこの制度は、学校側が申請・管理の窓口を担います。生徒・保護者からの申請書類の受付・審査・e-Shien(電子申請システム)への入力・支援金の受け取りと授業料への充当処理が事務職員の担当業務になります。
また、私立高校授業料の実質無償化(令和7年度〜所得制限撤廃)により、対象者が大幅に拡大しています。制度改正のたびに手続きが変わるため、文部科学省の最新情報を定期的に確認する習慣が必要です。
08消防法・建築基準法 重要
学校の施設管理を担う事務職員が知っておくべき法律として消防法と建築基準法があります。消防法では、学校に設置義務がある消火器・火災報知器・避難設備の点検記録の管理、消防署への報告が義務づけられています。建築基準法では、学校建物の定期点検・報告義務があります。
これらの点検・報告を怠ると法令違反になるだけでなく、万が一の事故時に学校の責任が問われます。専門業者への点検依頼・記録の保管・行政への報告が事務職員の管理業務として発生します。
09育児・介護休業法 把握推奨
産前産後休暇・育児休業・介護休業の申請対応は学校事務員が担うことが多い業務です。育児・介護休業法では、取得できる期間・給付金の手続き・職場復帰後の扱いなどが定められています。特に2022年・2023年の改正により、男性育休の取得促進・産後パパ育休(出生時育児休業)の新設など、制度が大きく変わりました。
また、育休中の社会保険料免除申請(私学共済への届出)・給付金の申請補助(雇用保険)・復帰後の時短勤務対応など、一連の手続きをスムーズに進められるよう手順を整備しておくことが重要です。
10所得税法・地方税法(住民税) 把握推奨
給与計算・年末調整を担う事務職員にとって、所得税法と地方税法の基礎知識は実務直結の知識です。所得税法では、源泉徴収の仕組み・扶養控除・各種所得控除・年末調整の手続きが規定されています。地方税法では住民税の特別徴収(会社が給与から天引きして市区町村に納付する仕組み)の根拠があります。
毎年の税制改正(扶養控除の見直し・新たな控除の追加など)は、年末調整の手続きに直接影響します。そのため、国税庁の「年末調整のしかた」を毎年確認する習慣が必要です。
法律知識を身につける3つの方法
「10個も法律を覚えなければいけないのか」と感じた方もいるかもしれません。しかし、すべてを暗記する必要はありません。大切なのは「どんな法律があるかを知っていること」と「何か疑問が生じたときに調べられること」です。
| 方法 | 内容 | おすすめ度 |
|---|---|---|
| 実務で疑問が出たら調べる | 「なぜこの手続きをするのか?」という疑問が出るたびに根拠法を調べる習慣。最も記憶に定着する方法 | ◎ 最もおすすめ |
| 学校事務員向けの研修に参加する | 都道府県の私学協会・学校法人関係団体が主催する研修は、実務に即した法律解説が多い | ○ 体系的に学べる |
| 専門書・テキストで体系的に学ぶ | 「学校事務の法律・制度ハンドブック」などの実務書で体系的に把握する | ○ 全体像の把握に有効 |
まとめ:法律知識は「守るため」ではなく「仕事を正確にするため」のもの
- 学校教育法・私立学校法 ─ 学籍管理・学校法人運営の根拠。令和7年私学法改正の内容は必ず把握する
- 個人情報保護法 ─ 生徒・保護者・職員の情報を扱うすべての業務に関係する。漏洩は絶対に許されない
- 労働基準法・私学共済法 ─ 給与計算・勤怠管理・社会保険手続きの土台
- 学校法人会計基準 ─ 一般企業会計とは異なる独自ルール。経理経験者も学び直しが必要
- 就学支援金制度・消防法・育休法・税法 ─ 業務に応じて深く知っておく必要がある制度群
- 法律知識は「暗記」より「調べ方を知ること」 ─ 疑問が出たら根拠法を調べる習慣が実務力を高める
法律知識は「難しいもの」と敬遠されがちですが、実務の場面で「なぜこうするのか」の根拠を知ることで、仕事の正確さと判断力が格段に上がります。すべてを一度に覚える必要はありません。まず今の自分の業務に関係する法律から、少しずつ理解を深めていきましょう。








