こどもへの性暴力は、絶対に許されない犯罪です。学校・保育所・習い事の場で、信頼していた大人から受けた傷は、こどもの心と体に長く深く残ります。そのような被害を二度と起こさせないために、2024年6月、「こども性暴力防止法(日本版DBS)」が成立しました。この法律は、こどもと接する仕事に就く人が過去に性犯罪を行っていないかを確認する仕組みを整備するものです。
この記事では、私立学校の事務職員として採用業務を担当する筆者が、こども性暴力防止法の概要・現在運用中の3つの確認システムの違い・義務と任意の区別・保護者とこどもへのメッセージをわかりやすく解説します。




こども性暴力防止法とは:制度ができた背景
こどもへの性暴力を防ぎ、こどもの心と身体を守るため、2024年6月に「こども性暴力防止法」が成立しました。正式名称は「学校設置者等及び民間教育保育等事業者による児童対象性暴力等の防止等のための措置に関する法律」といいます。ニュースでは「日本版DBS」とも呼ばれています。
| 成立 | 2024年6月26日 |
| 施行予定 | 2026年12月25日 |
| 対象事業者 | 学校・保育所・認定こども園・学童保育・習い事教室など、こどもと接する幅広い事業者 |
| 義務の内容 | こどもと接する仕事に就く人の性犯罪歴を確認することの義務化 |
| 対象者の範囲 | 新規採用者だけでなく、在職中の職員も施行後1年以内に確認が必要 |
現在運用中の3つのシステムと「こまもろうシステム」について
こども性暴力防止法の施行(2026年12月予定)を前に、すでに運用が始まっている確認システムが3つあります。「こまもろうシステム」という名称は公式文書では確認されていませんが、これらのシステムをまとめた呼び方として使われることがあります。それぞれの仕組みと違いを整理します。
システム1特定免許状失効者管理システム(文部科学省)
管理省庁:文部科学省
運用開始:2023年(令和5年)4月1日
義務・任意:義務(教育職員を任命・雇用する際に確認が法律で義務付けられている)
確認できる内容:
都道府県教育委員会が入力した特定免許状失効者等の情報を、各採用権者(教育委員会・国立大学法人・学校法人等)が検索・閲覧できる機能を有したシステムです。「特定免許状失効者等」とは、児童生徒性暴力等を行ったことにより、教員免許状が失効または取上げとなった者をいいます。
誰が使えるか:採用権者(都道府県・指定都市の教育委員会、国立大学法人、学校法人等)のみ。一般の保護者は利用できません。
検索に必要な情報:採用予定者の氏名・生年月日
対象となる行為:不同意性交等・不同意わいせつ・強制わいせつ・児童ポルノ・盗撮・セクシャルハラスメントなど、刑事罰にならない行為も含む幅広い性暴力行為
システム2保育士特定登録取消者管理システム(こども家庭庁)
管理省庁:こども家庭庁
運用開始:2024年(令和6年)4月1日
義務・任意:義務(保育士を任命・雇用する施設が確認することが法律で義務付けられている)
確認できる内容:児童へのわいせつ行為などで保育士資格を取り消された人の記録をデータベースで管理するものです。データに登録されるものは「特定登録取消者の氏名」や「保育士の登録の取消しの事由」「行った児童生徒性暴力等に関する情報」等となっています。
誰が使えるか:保育士を採用する施設・事業者のみ。保護者は利用できません。
検索に必要な情報:採用予定者の氏名・生年月日(旧姓でも検索可能)
対象施設:保育所・認定こども園・一時預かり事業・小規模保育事業・認可外保育施設・児童発達支援・放課後等デイサービス等
システム3官報情報検索ツール(文部科学省)
管理省庁:文部科学省
運用:希望者に提供(電子ファイル形式)
義務・任意:任意(法律上の義務ではなく、利用を希望する採用権者が申請して使用する)
確認できる内容:官報に公告された教員免許状の失効・取上げ情報(児童生徒性暴力等に限らない)を検索できるツールです。つまり、性犯罪以外の理由(重大な非違行為・服務違反など)による免許失効情報も検索できます。
誰が使えるか:文部科学省に同意書を提出した採用権者のみ。一般の保護者は利用できません。
注意点:検索ツールは、入力した氏名と官報に公告された情報の氏名が完全に一致する場合のみ、該当者の官報に公告された情報を表示する仕組みとなっています。そのため、改名・旧姓の確認には限界があります。
3つのシステムの違いを一覧で比較
| 比較項目 | 特定免許状 失効者管理 システム |
保育士特定 登録取消者 管理システム |
官報情報 検索ツール |
|---|---|---|---|
| 管理省庁 | 文部科学省 | こども家庭庁 | 文部科学省 |
| 義務 / 任意 | 義務 | 義務 | 任意 |
| 対象者 | 教員免許状を持つ教育職員 | 保育士資格を持つ保育士 | 教員免許状を持つ者全般 |
| 対象施設 | 学校(幼稚園〜大学) | 保育所・認定こども園・放課後等デイサービス等 | 採用権者全般 |
| 確認できる失効理由 | 性暴力等による失効のみ | 性暴力等による取消のみ | 性暴力等に限らず全ての失効理由 |
| 利用できる人 | 採用権者のみ | 採用施設のみ | 採用権者のみ(同意書提出要) |
| 運用開始 | 2023年4月 | 2024年4月 | 運用中(改善継続) |
特定免許状失効者管理システムの使い方(学校事務職員向け)
学校事務職員が採用業務で実際に使う「特定免許状失効者管理システム」の確認手順を整理します。
2026年12月施行:日本版DBSで何が変わるか
2026年12月25日の施行後、確認の仕組みはより広く・強化されます。
| 項目 | 現在(施行前) | 2026年12月施行後 |
|---|---|---|
| 確認対象の職員 | 新規採用者のみ | 新規採用者+在職中の全職員(施行後1年以内に確認) |
| 確認対象の事業者 | 学校・保育所等(限定的) | 学校・保育所・学童保育・民間の習い事教室等へ拡大 |
| 確認できる性犯罪歴 | 免許失効・資格取消情報のみ | 免許の有無にかかわらず性犯罪歴を確認可能 |
| 定期確認 | 採用時のみ | 採用時+5年ごとの定期確認 |
保護者のみなさんへ:制度を知って、こどもを守る
制度が整備されることで、採用時の確認は事業者の義務になります。しかし、制度だけですべての被害を防ぐことはできません。保護者としてできることがあります。
- 子どもとの対話の習慣を作る ─「今日学校(習い事)で何かあった?」を日常的に聞く習慣が、被害の早期発見につながる
- 「嫌なことは嫌と言っていい」と伝える ─ 先生や大人に対しても「嫌なことは断っていい」ということを、言葉で伝え続ける
- 子どもが話しかけてきたときは全力で聞く ─ 被害を打ち明けるとき、こどもは何度もためらいながら話します。「忙しい」と流さず、向き合う時間を持つ
- 習い事・学外活動の様子を定期的に確認する ─ 体験談のような話を聞きながら、特定の大人に対する様子の変化がないかを気にかける
- 被害を話してくれたら、まず信じる ─ 「そんなはずない」という反応はこどもを傷つけます。まず受け止めて、一緒に動く
法務省が運営する子どもの人権相談専用ダイヤルです。こどもが直接かけることもできます。
#8103(ハートさん):性暴力被害者支援の相談窓口
全国共通の短縮番号で、都道府県の性暴力被害者支援センターにつながります。
こどもたちへ:あなたは悪くない。信頼できる大人に話してほしい
「言ったら怒られる」「信じてもらえないかも」「先生に悪いことをしてしまうかも」と思う必要はありません。あなたが受けた嫌なことは、その大人がしてはいけないことをしたのです。
信頼できる大人——お父さん、お母さん、祖父母、他の先生、スクールカウンセラー、誰でもいい——に話してほしいのです。話しにくければ、電話でもいい。「子どもの人権110番(0120-007-110)」は無料で、秘密を守ってくれます。
あなたの話を聞いてくれる人は必ずいます。
まとめ:学校事務職員として、制度を正しく使いこどもを守る
- こども性暴力防止法(日本版DBS)は2024年6月成立・2026年12月25日施行予定
- 現在の義務確認システムは「特定免許状失効者管理システム」(教員)と「保育士特定登録取消者管理システム」(保育士)の2つ
- 「官報情報検索ツール」は任意利用。性犯罪以外の失効理由も検索できる点が特徴
- 2026年12月施行後は民間の習い事教室等も対象になり、在職者の確認も義務化される
- 確認記録の保存・年度更新忘れ防止・担当者変更時の引き継ぎが実務上の重要ポイント
- 制度だけではすべての被害を防げない。保護者のこどもとの対話・こども自身が声を上げられる環境作りが同様に重要
こどもへの性暴力は、決して許されない犯罪です。制度の整備・採用時の確認・職場内での研修・相談窓口の設置——学校事務職員としてできることを一つひとつ確実に積み重ね、こどもたちが安心して学べる場所を守ることが私たちの責任だと思っています。








