「子どもが3人いるから大学の授業料が無償になると聞いた」「所得制限なしで使えるって本当?」——2025年4月から始まった多子世帯への大学無償化の拡充により、大学の授業料免除の対象が大きく広がりました。しかし、「申請しなければ自動的に適用されない」「全額無償ではない」「大学院は対象外」など、正しく理解しておかないと損をするポイントが複数あります。
私は私立学校の事務職員として、奨学金・授業料免除に関する相談を日々受けています。この記事では、大学無償化制度(高等教育の修学支援新制度)の2025年最新情報を、学生・保護者が申請で損をしないように徹底解説します。




大学無償化制度(修学支援新制度)の全体像
まず、制度の全体を把握しておきましょう。2020年に始まったこの制度は、2025年度から多子世帯への支援が大幅に拡充されました。制度の柱は「授業料・入学金の減免」と「給付型奨学金の支給」の2本立てです。
| 制度の区分 | 対象世帯 | 主な支援内容 |
|---|---|---|
| 従来制度 (第1〜4区分) |
住民税非課税世帯および準ずる世帯 (年収目安:〜約600万円) |
授業料・入学金の減免+給付型奨学金 所得に応じて支援額が変わる |
| 2025年度拡充 (多子世帯) |
扶養する子どもが3人以上の世帯 所得制限なし |
授業料・入学金の減免(上限額あり) 給付型奨学金との併用も可能 |
多子世帯の大学無償化:対象条件を正しく理解する
2025年度から始まった多子世帯への授業料等無償化の対象条件には、いくつかの重要なポイントがあります。
条件1扶養する子どもが3人以上いる世帯
「扶養する子ども」の数は、税法上(住民税の課税情報)での扶養親族の数で判定されます。申請時点で確定している前年以前の年末(12月31日)時点の課税情報が使われます。
重要なのは、大学生のきょうだいも「年収103万円以下(2026年10月以降は160万円以下)であれば扶養としてカウントされる」点です。アルバイトをしている大学生のきょうだいがいる場合、収入が103万円を超えると第3子としてカウントされなくなる可能性があります。
条件2学業要件を満たしていること
無償化の支援を継続して受けるには、毎年度の学業成績要件を満たす必要があります。主な基準は以下の通りです。
| 確認タイミング | 主な基準 |
|---|---|
| 1年次修了時(継続判定) | GPA等が下位4分の1に属さないこと・修得単位数が標準の5割以上 |
| 2年次以降(毎年度) | 同上。警告を2回受けると支援打ち切りになる場合あり |
多子世帯での支援を受けるためにも学業成績要件は適用されます。留年・休学・退学等が支援継続に影響するため、注意が必要です。
条件3資産要件
多子世帯の授業料減免については、学生本人と生計維持者の資産合計額が3億円未満であることが条件です。ただし、給付型奨学金との併用を希望する場合は5,000万円未満が要件です。
資産が5,000万円以上3億円未満の世帯は、授業料減免のみ受けられ、給付型奨学金は受けられません。
支援の上限額:「全額無償」ではない点に注意
「大学が無償化」という表現が先行していますが、実際には上限額が定められており、授業料がすべて無償になるわけではありません。特に私立大学の場合は上限を超える部分が自己負担になります。
| 学校種別 | 授業料減免の上限額(年間) | 入学金減免の上限額 |
|---|---|---|
| 国公立大学 | 約54万円 | 約28万円 |
| 私立大学 | 約70万円 | 約26万円 |
| 国公立短期大学・高専(4〜5年) | 約39万円 | 約28万円 |
| 私立短期大学 | 約62万円 | 約25万円 |
| 私立専門学校 | 約59万円 | 約16万円 |
申請方法:予約採用と在学採用の2つのルート
大学無償化(修学支援新制度)の申請には、大学進学前に申し込む「予約採用」と、大学入学後に申し込む「在学採用」の2つのルートがあります。
ルートA予約採用(進学前に高校経由で申請)
対象:高校3年生、または高校卒業後2年以内の方
申請時期:高校3年生の4月下旬〜5月頃(高校によって異なる)
申請窓口:在籍している高校の奨学金担当窓口
流れ:高校で申請書類を受け取り→必要書類を準備→高校経由でJASSOに提出→採用候補者決定通知を受け取る→進学後に大学窓口で進学届を提出
ルートB在学採用(大学入学後に大学経由で申請)
対象:大学等に在学中の学生
申請時期:春学期(4月〜5月頃)と秋学期(9月〜10月頃)の年2回が一般的
申請窓口:在籍している大学・短大・専門学校等の奨学金担当窓口
流れ:大学窓口で申請書類を受け取り→必要書類を準備→大学経由でJASSOに提出→審査・採用結果の通知→授業料減免が適用される
申請時に必要な主な書類
| 書類 | 取得方法・注意点 |
|---|---|
| 給付奨学金申請書 | 大学または高校の奨学金窓口で配布 |
| マイナンバー関連書類 | 学生本人・生計維持者(父母等)のマイナンバーの提出が必要。多子世帯の判定はマイナンバーを通じてJASSOが確認する |
| 収入状況確認書類 | 前年度の源泉徴収票や確定申告書の控えなど(大学により異なる) |
| 家族状況確認書類 | 住民票、扶養状況を確認できる書類(課税証明書など) |
| 学業成績証明書 | 在学採用・継続審査の際に必要(大学発行) |
対象校の確認:すべての大学が対象ではない
修学支援新制度は、文部科学省の確認を受けた対象校に在籍している場合のみ支援を受けられます。国公立・私立を問わず、一定の要件を満たした大学・短大・専門学校・高専が対象です。
- 大学・短期大学(学部・学士課程)
- 高等専門学校(4・5年生のみ)
- 専門学校(確認を受けた学科のみ)
- 国公立・私立問わず
- 昼間課程・夜間課程(上限額は異なる)
- 大学院(修士・博士課程)
- 高等専門学校の1〜3年生
- 確認を受けていない専門学校・学科
- 通信制(上限額が異なる場合あり)
- 外国の大学
よくある疑問Q&A
Q1すでに在学中で今まで申請していなかった。今から申請できますか?
はい、できます。在学採用は在学中であれば申請できます。年2回の申請期間(春・秋)に大学窓口で申請してください。ただし、遡って過去の学期の減免を受けることは基本的にできません。気づいたら早めに申請することが重要です。
Q2きょうだいが来年就職して扶養から外れます。支援は継続されますか?
扶養するきょうだいの数が3人未満になると、多子世帯としての支援要件を満たさなくなります。ただし、従来制度の所得要件(第1〜4区分)を満たす場合は、引き続き従来制度の支援を受けられます。毎年度の継続判定で多子世帯の要件を確認されるため、状況が変わる年度の前に大学の奨学金窓口に相談しておくとよいでしょう。
Q3双子・多胎児の場合、第2子以降は一気に支援対象になりますか?
双子の場合、2人同時に生まれても扶養人数が2人になるため、もう1人扶養する子どもがいれば多子世帯(3人以上)の要件を満たします。ただし、双子2人だけの場合は2人扶養となり、多子世帯(3人以上)の要件は満たしません。従来制度の所得要件は引き続き適用されます。
Q4親が自営業・フリーランスの場合、収入の確認方法は?
給与所得者(会社員)の場合は源泉徴収票、自営業・フリーランスの場合は確定申告書の控えが収入確認に使われます。確定申告をしていない場合は収入証明が取れないケースがあるため、毎年確定申告を行っておくことが重要です。また、扶養人数の正確な申告も収入申告と同時に行う必要があります。
まとめ:大学無償化で「申請しないと損」にならないために
- 2025年度から扶養する子が3人以上の世帯は所得制限なく授業料減免を受けられる
- 支援は自動適用されない。大学窓口でのJASSOへの申請が必須
- 申請は春学期(4月〜5月)と秋学期(9月〜10月)の年2回が基本
- 高校生は3年生の4月〜5月から高校経由で「予約採用」の申請ができる
- 私立大学の上限は年間70万円。全額無償ではなく差額は自己負担
- 大学院は対象外。学部(学士課程)のみ
- 扶養人数の確認は課税証明書・確定申告書を事前にチェック
- きょうだいのアルバイト収入が103万円超えると扶養から外れて多子世帯から外れる場合あり(2026年10月以降160万円に変更)
- 学業成績要件を満たさないと支援が打ち切られる
- 対象校かどうかは文部科学省の公式サイトで確認する
大学の授業料負担は、多くの家庭にとって非常に大きな問題です。2025年度からの多子世帯拡充は、所得制限なしという点で対象家庭の幅が大きく広がりました。しかし、申請しなければ受けられない制度です。「うちは対象外だろう」と思わず、まずは大学・高校の奨学金窓口に相談してみてください。








