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学校事務に転職した1年目は、「思っていたこと」と「実際のこと」のギャップの連続でした。良い意味でも悪い意味でも、転職前に想像していた「学校事務」とは違う現実が次々と飛び込んできました。
この記事では、SE歴10年以上から私立学校事務に転職した私の1年目を、月別にリアルに振り返ります。入職直後の戸惑い・はじめての繁忙期・先生文化への適応・「転職してよかった」と感じた瞬間まで、きれいごとなしにお伝えします。
転職を検討中の方にも、学校事務1年目を走り抜けている方にも、何か刺さるものがあれば嬉しいです。




転職前の状態:SEとして限界を感じていた
まず私がなぜ学校事務に転職したかを簡単に振り返ります。SIerでSEとして10年以上勤務し、システム開発・運用保守・顧客折衝を経験してきました。仕事は面白かったのですが、慢性的な残業・突発対応・終わりの見えないプロジェクトで体と心がじわじわと消耗していきました。
「このまま続けて大丈夫か」と感じ始めたのが30代に入った頃。転職活動を経て、私立学校の事務職員として採用が決まりました。「安定・定時退勤・人の役に立てる仕事」を求めての転職でした。
1年目の月別リアル記録
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入職初日から「紙とハンコの世界」に放り込まれる
入職初日、まず目に飛び込んできたのは棚一面を埋め尽くすキングファイルの群れでした。「これを全部把握するのか……」と軽く絶望しました。さらに電話が鳴るたびにメモ用紙に手書き、FAXで書類を受け取り、紙の台帳に手書きで記録する——SE時代に慣れ親しんだデジタルの世界とは真逆の環境に、最初の1週間は戸惑いっぱなしでした。
また4月は入学・新年度・人事異動が重なる最繁忙期です。「引き継ぎはゆっくりやります」と言っていた前任者が、あっという間に退職日を迎えました。「え、もう来ないんですか」という言葉が喉まで出かかりました。
4月の嵐が過ぎ、初めて「定時退勤」を経験する
4月の怒涛が終わり、5月の連休明けから職場が嘘のように落ち着きました。16時半に「今日やることが全部終わった」という状態で帰れた日の感動は今でも忘れられません。SE時代は「全部終わった」という感覚を味わったことがほとんどなかったので、「仕事が終わるものだ」という事実を体で実感したのが5月でした。
一方で、前任者からの引き継ぎメモを読み返しながら「4月に何をやったのか」を復習する日々でもありました。怒涛の中でこなした業務の意味を、後から理解していくという不思議な体験でした。
住民税の更新を初めて担当し、「1つミスると大変」を実感する
6月は市区町村から届く住民税の特別徴収税額通知書を給与計算システムに反映する作業があります。職員全員分の税額を1人ずつ確認して入力する地味な作業ですが、1件でも間違えると職員の手取り額が変わってしまうという責任の重さをこの時初めて実感しました。
SE時代の「バグが出たらどうしよう」という緊張感に似た感覚がありましたが、種類が違います。「人のお金を扱っている」というリアリティが、SE時代のシステムへの責任感とは質が異なりました。ダブルチェックを徹底するという習慣は、この6月から本格的に身につき始めました。
初めての夏休み。「これが人間の夏だ」と感じた
夏季休暇に入ると、職場が別世界のように静かになりました。電話もほとんど鳴らない、来客もない、急ぎの書類もない。最初の1週間は「これでいいのか」と落ち着かない気持ちになりました。SE時代は夏でも関係なく忙しかったので、「夏が静かである」という状態自体が非日常でした。
しかし夏季休暇を使って念願だった海外旅行に行けたことで、「転職してよかった」と初めて心から感じることができました。SE時代には「いつか行こう」と言い続けて5年が経っていた旅行先に、転職1年目の夏に行けたことは、給与が下がった分を補ってあまりある体験でした。
また閑散期を利用して、4月に慌ただしくこなした業務の復習・マニュアル整備・Excelの自動化作業を進めました。「来年の自分のために仕込む」という時間は、SE時代にはほとんどなかったものです。
後期が始まり、「学校のリズム」がわかってきた
9月から後期が始まり、授業料の後期分徴収・社会保険の算定基礎届の反映・行事関連の書類処理など、それなりに業務が増えてきました。ただし4月の繁忙期と比べると明らかに穏やかで、「これくらいなら余裕で対応できる」という自信が少しずつついてきました。
また、この頃になると先生方との関係も少しずつ築けてきた感覚がありました。「けけちゃまさんに頼むと早い」「PCのことはあの人に聞けばいい」という認識が職場内で広がり始め、頼られる場面が増えてきました。SE出身の強みがじわじわと発揮され始めた時期です。
年末調整の山場。「1年で最大の書類作業」を初体験
11月から年末調整の申告書を職員全員に配布し、回収・確認・計算・還付処理・源泉徴収票の作成と、年末に向けた怒涛の作業が始まりました。「年末調整って毎年やるんですか」という当たり前の質問を心の中でしてしまいました。
特に苦労したのが申告書の記載ミスや添付書類の不備への対応です。「ここが間違っています」と伝えに行くたびに「ごめんなさい、書き方がわからなくて」と言われる先生が何人もいました。SE時代の「仕様書の読み合わせ」に似た作業だと思いながら、一人ひとりに丁寧に説明することで何とか乗り越えました。
12月の給与で年末調整の還付・追加徴収が正確に反映されたとき、「やり切った」という達成感がありました。小さな達成感でしたが、1年目としては大きな自信になりました。
「来年の自分へのメモ」を書き残す
年末年始の休暇に入る前に、1年間で経験した業務の振り返りノートを作りました。「4月にやること」「6月の住民税更新の手順」「年末調整でよくあるミス」——来年の自分が困らないように書き残す作業は、SE時代にはなかった習慣です。しかしこれが翌年の業務を大幅に楽にしてくれました。
入試シーズン突入。「学校ならでは」の緊張感を初体験
1月から入試関連の業務が増え始めました。出願書類の受付・審査補助・合否通知の発送準備など、学校事務ならではの業務が続きます。入試は「生徒の人生の分岐点」に直接関わる仕事であり、書類の1枚でも欠落があってはいけないという緊張感はSE時代の本番リリース前に近い感覚でした。
また2月は翌年度の予算編成・入学手続き書類の準備・次年度の人事に関わる書類と、「4月の地獄への助走期間」であることを実感しました。「2月にどれだけ準備できるかで4月の辛さが変わる」ということを先輩職員から教えてもらい、先手を打つ習慣をこの時期から意識し始めました。
2度目の繁忙期。「1年前とは全然違う」と気づく
卒業式・年度末決算・退職者の手続き・新入生の受け入れ準備——1年前と同じ嵐が来ました。しかし今回は「何をすべきか」がわかっている状態で臨んでいるという圧倒的な違いがありました。冬休みに書き残したメモが実際に役立ち、「去年の自分ありがとう」と思いながら仕事を進めました。
3月末、1年目が終わろうとしていた夜に「この1年間、全部乗り越えた」という感覚が静かに訪れました。SE時代の年度末は「また来年も同じことが続くのか」という疲弊感がありましたが、学校事務の年度末は「また来年も同じリズムで迎えられる」という安心感でした。
1年目を振り返って:特に苦労したこと3つ
1年間を通じて、特に苦労したことを正直に振り返ります。転職を検討している方に「こういうことがあるんだ」と知っておいてほしいことです。
1年目を振り返って:よかったこと3つ
苦労ばかりではありません。1年目に「転職してよかった」と感じた瞬間も、きちんと振り返ります。
学校事務1年目を乗り越えるための5つのコツ
1年間の体験から導いた、学校事務1年目を乗り越えるための実践的なコツをまとめます。
- 「引き継ぎはないもの」と思って臨む ─ 前任者のメモが不完全でも驚かない。不明点は公的機関・専門家・検索で自力解決する力をつける
- 業務をこなすたびに「来年の自分へのメモ」を書く ─ 1年目にやった業務の手順・注意点・ミスしやすい箇所を記録。翌年の自分への最高の贈り物になる
- 先生文化を「変える」より「対処する」発想に切り替える ─ 締め切りに遅れる先生を変えようとせず、リマインドを仕組み化して自分のストレスを減らす
- 同業者のコミュニティ・SNSを活用する ─ 少人数職場の孤独感を和らげる最良の手段。「同じ悩みを持つ人がいる」とわかるだけで気持ちが楽になる
- 「3月末まで頑張れば、来年は楽になる」と信じる ─ 1年目は「全部が初めて」だから大変。2年目からは「去年やったこと」として余裕が生まれる。必ず楽になる
まとめ:学校事務1年目は「慣れるまでの準備期間」
学校事務の1年目は、すべてが初めてで不安だらけです。しかし1年間をひと回りすれば「何をすべきか」が見えてきて、2年目からは同じ業務を余裕を持って進められるようになります。
転職を検討している方へ:1年目が大変なのは当たり前です。完璧にこなせなくていい。「この1年で全部覚える」より「この1年で全体の流れをつかむ」という目標設定で臨むことをおすすめします。
すでに1年目を走り抜けている方へ:今感じている大変さは、あと少しで楽になります。2年目からは「去年の自分が残したメモ」が最強の武器になります。








